科学技術の倫理学Ⅱ

勢力尚雅 編著

 

定価(本体2400円+税)

ISBN978-4-87262-036-8

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まえがき 「科学技術」をめぐって「バランスをとる」とは何をすることかを考え実践を試みることへの招待

 

第1章 科学技術をめぐる知性とエートス(勢力尚雅)
  第1節 近代的な科学技術を生む知性の特徴
      要素還元主義とは何か  要素還元主義が生む文化の特徴
  第2節 社会的分業と合意至上主義が生む対話不全  
      対話を阻害する態度と促進する態度① 「誠実さ」の履き違えによる呪縛のコミュニケーション
      対話を阻害する態度と促進する態度② 「責任」についての独特な追及の仕方と回避の仕方
      「失敗は伝わらない」 責任回避行動と「わかりやすさ」の罠
  第3節 リスクを計測・制御しようとする倫理とその諸問題 予防原則・費用便益計算が生むもの
      予防原則 費用便益計算
  第4節 生きものとしての科学技術との共生の行方 知性が制御できない科学技術の自己増殖
      トランスサイエンスの領域 健やかな生活か災厄か、科学技術がパンドラの函とならないために何ができる?
      事前行動原則
  第5節 複雑系における知のあり方 等身大の科学と懐疑派のエートスとマナー
      システムの歯車に徹すべしというエートスが生む「偽ベテラン」の文化
      「等身大の科学」と「新しい博物学」
      「等身大の科学」と「新しい博物学」の文化とエートス 「頭の悪さ」と「認識の人」
      知性に関する懐疑 想像力の強みと弱み
      懐疑派のエートス 「対話」というマナーとそれが生む「寛容」「誠実さ」
コラム① 認識や制度の形を生成する想像力の飛躍(勢力尚雅)  

 

第2章 科学技術を用いる者が今から考えるべきことは何か(田中基寛)

  第1節 科学技術を用いる者が考えるべきことは何か

  第2節 「科学」を考える学と、科学技術の倫理が選んだ道
      「科学」を考える学が明らかにしたもの  「科学社会学」は科学の制御をテーマアップする
      科学技術の応用倫理の誕生  責任とその拡大への対処というテーマ
      方法論としての事例研究・要綱・高い倫理を持つ科学技術者の涵養と集団化という概念
      選んだ道としての専門化志向
  第3節 安全確保に見る「遠さ」の原因
      安全への意識の強さ  明確でない「社会実験的性格の認識」と「責任の拡大への対処」

      社会による企業の制御(その一) 法や規格による安全担保の進展
      社会による企業の制御(その二) 製造物責任の法規化  
      社会による企業の制御(その三) 組織において拡大する「責任のコミュニケーション」

      「遠さ」の意味 = 社会的制御の進展

      科学技術の倫理が志向する個人による問題解決と専門家集団形成の行方
      それでも残るもの 責任すなわち応答を担う者としての専門性

 

  第4節 次なる課題としての環境問題

      「安全確保」の次に企業の行動制御が図られる「CSR」と「環境問題
      ダイアログとエンゲージメント

  第5節 環境問題の経済による制御

      経済の内部化による制御  環境情報開示のデファクトスタンダードの出現
      統合報告とCDPとの結び付きが可能にした一つの理想形  自然資本に対する対処へ要求は拡大する  

  第6節 専門化社会の問題に向き合う知のあり方

      「経済の内部化」にも限界を突きつける「有限性」  「科学」の学が取り戻すべきアイデンティティ 

      科学に内在する性格に立ち返る

コラム② 傾聴すべき先人の実践(大橋力の論)(田中基寛)

 

 第3章 科学技術化した社会の責任主体(古田徹也)

  は じ め に 

  第1節 科学、技術、社会の相互関係の中身

      科学とは何か、技術とは何か  科学と技術のフィードバック・サイクル
      科学技術と社会のフィードバック・サイクル  フィードバック・サイクルの高速化、大規模化、不透明化

  第2節 科学技術化した社会における責任の所在
    2-1 責任帰属の標準的な見方
    2-2 責任を負う対象の拡大および曖昧化
      顔の見えない対象、価値観の多様性  公害、原発問題、環境問題
      責任を負う対象の間接化、抽象化
    2-3 責任を負う主体の拡大および曖昧化
      分業化の進行、責任の分散  個人という主体の弱さ、「風土」「文化」「空気」への順応
    2-4 この節のまとめ
  第3節 市民の倫理としての科学技術の倫理
      科学技術化した社会の主役としての市民  一任=無責任からの脱却 「盛り上がり、しぼむ」サイクルを超えて
      自己欺瞞からの脱却 自分の日々の行為の意味を知り、行動すること
      対話や熟議というあり方  科学技術者が市民であることの重要性
コラム③ 「共同行為」の問題圏(古田徹也)

 

第4章 リスク化する「自然」 技術は未来をどのように変えるのか? (佐々木慎吾)
  は じ め に  
  第1節 天災と祈り
      古代人の災害観  日常性の回復 「やりきれなさ」をどう処理するか
  第2節 「リスク」と「危険」
      ルーマンのリスク概念 「何」への問いから「誰」への問いへ

      責任のコミュニケーションから「リスク」が生まれる
      リスクの社会次元と時間次元
  第3節 「知」の拡大とリスク 
      決定のあるところに、リスクあり  「生」のリスク化 技術と内部的自然
  第4節 リスクとしての「未来」 リスク社会における「信頼」の行方
      リスク社会の時間構造  日常性への信頼の根拠 回復される過去
      断絶する時間 過去からの離脱と技術
  終わりに リスク社会の倫理学へ向けて
コラム④ 「社会システム理論」への招待(佐々木慎吾)

 

第5章 弱さを認めて強くなる(立花幸司)

  個人の有徳な倫理性に頼らない科学技術倫理の構築にむけて

  第1節 科学技術者の倫理としての徳とその教育  
      1-1科学技術者の倫理としての徳
      1-2科学技術者への徳の教育
      1-3徳への疑問・徳ある科学技術者になれるのだろうか
  第2節 徳ある性格なんてあるのだろうか
      2-1ムード効果
      2-2傍観者効果
      2-3善きサマリア人の実験
      2-4正直さ研究
      2-5アイヒマン実験・ミルグラム実験
      2-6スタンフォード監獄実験
      2-7状況主義の指摘がもつ科学技術倫理学上の含意  
  第3節 弱さを認めて強くなる
      3-1社会心理学上のさまざまな研究
      3-2発想を転換してみる
      3-3制度への組み込みと倫理教育の可能性  
  結語  

 

コラム⑤ 倫理について私たちはどこまで知っているだろうか?(矢島壮平)  
コラム⑥ 「相当の対価」の倫理的根拠(矢島壮平)  


第6章 技術から科学技術へ、科学技術から「人間の学」へ(西塚俊太)
  第1節 三木清の『技術哲学』
      黒船来航と「科学技術」
      「自然」と「環境」  「技術」の成立
      「発明」と「発見」  「道具」と「機械」
      「科学技術」と日常  科学技術と責任の所在
      科学技術と対話の「場」  分業化と対話
      「倫理」と「人間」  科学技術と「人間の学としての倫理学」  
  第2節 現代的な課題  
コラム⑦ 人間の技術と「自然の技術」(西塚俊太)  

 

第7章 人は人を生み、技術は自然を模倣する(高橋幸平)
  技術と自然との関係をアリストテレスに探る
  は じ め に  
  第1節 技術と自然  
      制作する技術  技術の特徴 素材・始動因・目的の外在
      生成する自然 技術から自然へ  自然の特徴 素材・始動因・目的の内在  
  第2節 技術は自然を模倣する
      模倣という糸口  さまざまな模倣 学び、相似と優劣
  第3節 うるはしさの模倣
      組織のうるはしさ  「うるはしさ」と「ある」ことの優劣
  第4節 永遠にありつづけるうるはしさ
      円環・永遠性の模倣  うるはしさとあることの「はじめ」としての「神」
      神とこの世界
  第5節 種の継続
      生命の永続・人は人を生む  模倣の意味
  第6節 人の生存のための技術
      自然に反する技術  自然を模倣する技術のすがた  
  お わ り に
コラム⑧ 組織のうるはしさを観ること(高橋幸平)

 

第8章 現状を批判的に捉え直し改善していくために(横田理博)
  
  第1節 科学技術の歴史的位相
      (1) 近代自然科学の草創期についてのウェーバーの見解
      (2) ヤスパースの科学技術論
  第2節 「計算する」ということ?マックス・ウェーバーを手懸かりとして
      (1) 電車の動きを「計算する」
      (2) 法による「計算可能性」
      (3) 人間を「計算する」  本節のまとめ
  第3節 ドイツの脱原発への決断とその思想的背景
      (1) 高木仁三郎と「市民の科学」 
      (2) ドイツのエネルギー政策の転換
      (3) 「自己内省的な近代化」(ベック)
  

 

第九章 「人間の科学」のかたちを探して(勢力尚雅)
――ファシリテーションとは何をすることか
  第1節 ポスト・ノーマルサイエンスとは何か
      アプライド・サイエンスとプロフェッショナル・コンサルタンシー
      専門家が直面する困難への無理解と、それが生むもの・銘記すべき二つのこと
      ポスト・ノーマルサイエンスと参加型民主主義の困難
  第2節 「学習 Ⅲ」を生成する対話とはどういう活動か
      対話と熟議  学習Ⅲ・コミュニケーションが生む呪縛を解くためのコミュニケーション
      「活動」としての対話・アーレントの憂鬱
  第3節 「人間の科学」としての対話  ヒュームの懐疑と希望
      「人間的自然」とは何か  ヒュームの懐疑と「人間の科学」
      狩猟としての対話のよろこび
      知識人の任務? 学識の国から会話の国へつかわされた外交官
  第4節 ポスト・ノーマルサイエンスの適切な形を探し続ける「対話」をファシリテートする構想力
コラム⑨ 「人間的自然」とは何か  萃点を探し、担うということ(勢力尚雅)